その亜急性甲状腺炎、ストレスによるホルモン異常が原因かも |【公式】自由が丘・奥沢の総合内科なら世田谷内科・糖尿病総合クリニック

その亜急性甲状腺炎、ストレスによるホルモン異常が原因かも

 

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その亜急性甲状腺炎、ストレスによるホルモン異常が原因かも

「喉に違和感がある。」

その症状、亜急性甲状腺炎かもしれません。

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に一時的な炎症が生じる疾患で、首の痛みや発熱、全身の倦怠感などの症状を引き起こします。

一般的にはウイルス感染が主な原因とされていますが、近年ではストレスが発症や悪化の要因として注目されています。

本記事では、亜急性甲状腺炎とストレスの関係、ホルモン異常との関連性について詳しく解説します。

亜急性甲状腺炎とは

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が生じることで、痛みや腫れ、発熱などの症状が現れる疾患です。特に30〜40代の女性に多く見られます。

炎症により甲状腺ホルモンが一時的に過剰に放出され、動悸や発汗、体重減少などの症状が現れることもあります。

通常、数週間から数ヶ月で自然に回復しますが、症状が長引く場合もあります。病院で診察を受けても症状が長引いている場合は、亜急性甲状腺炎がなかなか治らない理由や対処法を詳しくまとめていますのでご参照ください。

ストレスと亜急性甲状腺炎の関係

ストレスと亜急性甲状腺炎の関係

亜急性甲状腺炎の主な原因はウイルス感染であるとされていますが、発症や経過の中でストレスが重要な引き金や悪化要因となっていることが、臨床の現場や研究の中で少しずつ明らかになってきました。

特に「強いストレスを感じた直後に発症した」「治りかけたのに再び悪化した時期に強い不安や精神的疲労があった」というような事例が多く報告されています。

ここでは、ストレスがどのように亜急性甲状腺炎に関係しているのかを、詳しく解説します。

ストレスが免疫系に与える影響

ストレスが人体に及ぼす影響の中でも最も重要なのが、免疫機能への干渉です。

急性の心理的ストレスは、交感神経を活性化させ、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンを分泌させます。これにより一時的に免疫細胞の動きが活性化されることもありますが、慢性的なストレス状態が続くと、逆に免疫のバランスが乱れて過剰な炎症反応を引き起こすようになります。

亜急性甲状腺炎の発症には、ウイルスなどに対する免疫反応が異常に強くなってしまうことで、甲状腺の細胞が炎症を起こすという説があります。つまり、慢性的なストレスが背景にあると、免疫反応が暴走しやすくなり、炎症性の病気を引き起こしやすくなるのです。

ホルモン系への影響とHPT軸の乱れ

ストレスが甲状腺に関与するもう一つの重要なメカニズムは、ホルモン系の調整機構(HPT軸)に対する影響です。

HPT軸(視床下部—下垂体—甲状腺軸)は、脳からの指令によって甲状腺ホルモンの分泌をコントロールしています。ストレスによってこの軸に異常が生じると、甲状腺ホルモンのバランスが崩れ、一時的な過剰分泌(亢進症状)やその後の低下(機能低下症)が引き起こされる可能性があります。

実際、長期にわたるストレスはTSH(甲状腺刺激ホルモン)の分泌を低下させるという報告もあり、甲状腺そのものの機能とは別に、ホルモンのコントロール中枢に障害が起こることで、亜急性甲状腺炎の経過に影響を及ぼしている可能性があります。

発症リスクを高める「ストレス負荷」の種類

すべてのストレスが等しく影響するわけではありません。

特に以下のような強く持続する精神的ストレスは、亜急性甲状腺炎の発症リスクを高める要因となり得ます。

  • 身内の死や離別などの「喪失体験」
  • 職場での長時間労働や人間関係の悪化
  • 経済的な困窮や生活基盤の不安
  • 子育てや介護による慢性的な疲労
  • 長引く不眠や過労

このようなストレスは交感神経の活動を持続的に高め、副交感神経とのバランスを崩すことで、身体全体の調整機能を狂わせます。その結果、甲状腺の自己修復がうまくいかず、炎症が治りづらくなったり、再燃しやすくなったりするのです。

ストレスによる「症状の強調」と回復遅延

もう一つ見逃せないのが、ストレスが実際の症状の感じ方に影響するという点です。

例えば、同じレベルの甲状腺ホルモン異常があっても、ストレス状態にある人の方が「動悸がつらい」「眠れない」「だるくて何もできない」といった主観的な不調を強く訴える傾向があります。これは、ストレスによって自律神経が不安定になり、わずかな体調の変化にも敏感になってしまうためです。

また、ストレスが強いと炎症を抑えるホルモン(副腎皮質ホルモン)の働きも鈍くなり、結果的に治療薬の効果も現れにくくなります。これが、「適切な治療を受けているのに亜急性甲状腺炎がなかなか治らない」と感じる背景にもなっています。

ストレスとホルモン異常の関連性

ストレスとホルモン異常の関連性

亜急性甲状腺炎の症状や経過には、甲状腺ホルモンの異常な分泌が深く関係しています。

炎症により甲状腺組織が一時的に破壊されることで、体内のホルモンバランスが大きく乱れ、さまざまな身体症状を引き起こします。

さらに、こうしたホルモンの変動は、単なる炎症の影響にとどまらず、ストレスや自律神経の乱れとの相互作用によってさらに複雑になります。

ここでは、亜急性甲状腺炎とホルモン異常の具体的な関係を、経過ごとに詳しく解説していきます。

炎症によるホルモンの「一時的な暴走」

亜急性甲状腺炎が発症すると、最初に起こるのは「甲状腺細胞の壊死(破壊)」です。

これにより、甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモン(T3・T4)が血液中に一気に放出されます。

その結果、甲状腺機能亢進状態(いわゆるバセドウ病に似た状態)が一時的に生じます。

この段階では、

  • 動悸
  • 発汗過多
  • 体重減少
  • 手の震え
  • 不眠
    など、いわゆる「交感神経優位」な症状が強く出現します。

しかし、これはバセドウ病のようにホルモンが過剰に「作られている」のではなく、「壊れて漏れ出ている」だけであり、数週間以内に自然にホルモン濃度は低下していきます。

一過性の機能低下とホルモン不足による影響

炎症によって甲状腺組織が損傷すると、今度は逆に甲状腺ホルモンが作られにくくなる期間に入ります。これが「甲状腺機能低下症」であり、以下のような症状が見られます。

  • 強い倦怠感
  • うつ状態のような精神的な落ち込み
  • 体重増加
  • むくみ
  • 寒がり
  • 脈が遅くなる

この段階になると、「動きたくても動けない」「常に眠い」「感情が不安定」といった、生活に大きな支障をきたす症状が表れます。

ホルモン不足の程度が軽ければ自然に回復しますが、場合によっては甲状腺ホルモン剤(チラーヂンなど)による補充治療が必要になることもあります。

ホルモンの波と症状の“揺り戻し”

亜急性甲状腺炎の特徴として、「ホルモンの異常が一方向ではない」という点が挙げられます。

発症初期は“過剰”、その後“不足”、最終的に“正常”へと移行する複雑なパターンを辿ります。

この過程で、患者は日によって体調が大きく揺れ動きやすく、「良くなってきたと思ったらまたしんどい」という感覚に悩まされることが多いです。

また、炎症が再燃した場合には再びホルモンの過剰放出が起こり、同様の経過を繰り返すケースもあります。

ストレスとの相互作用がホルモンバランスを不安定にする

ここで重要なのが、ストレスとホルモン異常の相互作用です。

ストレスがかかると、脳の視床下部からの信号が乱れ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が抑制されたり、逆に過剰になったりすることがあります。

また、ストレス時には副腎からコルチゾールというホルモンが分泌され、これが甲状腺ホルモンの作用をブロックすることもあります。

つまり、

  • 体内でホルモンが出ていても“効かない”
  • 分泌自体が乱れる
     

といった“見えにくい二重のホルモン障害”が生じている可能性があります。

このように、ストレス→ホルモン異常→症状の悪化→さらにストレス…という悪循環に陥ると、治癒が長引いてしまうのです。

自律神経とホルモンの関係

甲状腺ホルモンは、自律神経の働きと密接な関係があります。

甲状腺ホルモンが多すぎると交感神経が優位になり、少なすぎると副交感神経が優位になります。

しかしストレスにより自律神経が乱れていると、ホルモンの本来の作用がうまく働かず、心拍数、睡眠、体温、代謝といった基本的な身体機能が大きく崩れます。

結果として、患者は「異常値は出ていないのに体調が悪い」という曖昧な不調を長く抱えることになります。

検査数値だけでは見えない「ホルモンの質的異常」

血液検査で「TSH」「FT3」「FT4」などの値が正常範囲に戻っていたとしても、ホルモンの働き自体が鈍くなっているケースが少なくありません。

これを「機能的低下」や「質的異常」と呼ぶこともあります。

こうした状況では、血液検査だけに頼らず、患者本人の体感や症状の変化を丁寧に観察することが治療判断において重要です。医師が「数値は正常だからもう大丈夫」と判断してしまうと、見落としや誤診につながる可能性もあります。

亜急性甲状腺炎予防や早く治すためにストレスとの向き合い方を考えよう

亜急性甲状腺炎予防や早く治すためにストレスとの向き合い方を考えよう

日々の生活の中で感じるストレスが、免疫バランスを乱し、炎症を長引かせる原因になることは少なくありません。

逆に言えば、ストレスとうまく向き合い、心身の緊張状態を緩めることができれば、亜急性甲状腺炎の予防や早期回復にもつながる可能性があります。

では、どうすればストレスとうまく付き合っていけるのでしょうか。

まず大切なのは、自分がどのような場面でストレスを感じやすいかを知ることです。

仕事や人間関係、将来への不安など、ストレスの種類は人それぞれですが、その「正体」に気づくだけでも心の整理がしやすくなります。

可能であれば日記やアプリを使って気分の変化を記録し、自分なりのストレスパターンを把握してみましょう。

次に、意識的に「ストレスを軽減する時間」を生活の中に取り入れることが重要です。

例えば、深呼吸を数分するだけでも自律神経が安定しやすくなりますし、自然の中を散歩したり、趣味に没頭したりする時間は、脳のストレスホルモン分泌を和らげる効果があります。睡眠や栄養状態の改善も、ストレス耐性を高めるうえで欠かせない要素です。

また、周囲とのコミュニケーションも大切です。

一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に気持ちを打ち明けることが、ストレスの重圧を和らげる一歩になります。必要であれば、心療内科やカウンセリングなど専門的なサポートを受けることも前向きな選択です。

ストレスは目に見えないものだからこそ、無視してしまいがちですが、亜急性甲状腺炎のような身体の病気にも確実に影響を及ぼしています。だからこそ、体のケアと同じくらい、心のケアにも目を向けていくことが、亜急性甲状腺炎の予防と回復に直結します。

亜急性甲状腺炎だけでなく、ストレスは万病の元

亜急性甲状腺炎だけでなく、ストレスは万病の元

亜急性甲状腺炎をはじめとする多くの病気の背景には、目に見えないストレスが静かに潜んでいます。現代社会において、ストレスは避けることが難しいものではありますが、無自覚のまま放置してしまうと、心だけでなく身体にも大きなダメージを与えることがあるのです。

甲状腺は体内のホルモンバランスを調整する重要な器官であり、自律神経や免疫系とも密接に関わっています。

こうした繊細なシステムは、精神的ストレスの影響を非常に受けやすく、知らず知らずのうちにバランスが崩れてしまいます。亜急性甲状腺炎では、ストレスによる免疫の乱れが炎症の引き金や回復の妨げになることがあるため、症状の管理と同時にストレスへの配慮も欠かせません。

しかし、これは亜急性甲状腺炎に限った話ではありません。ストレスが関与する病気は非常に多く、高血圧、糖尿病、うつ病、過敏性腸症候群、自律神経失調症、さらにはがんのリスクを高める要因になることも報告されています。

ストレスは一つの臓器や系統に限らず、全身に影響を及ぼす「万病の元」であるというのは、単なる比喩ではなく医学的にも裏付けられた事実なのです。

だからこそ、日々の生活の中で自分の心身の状態に敏感になり、ストレスを溜め込まず、適切にケアする習慣を持つことが健康を守る第一歩です。

忙しい日常の中でも、ふと立ち止まって深呼吸をする、好きな音楽を聴く、誰かに話を聞いてもらう。そんな小さな工夫の積み重ねが、病気を未然に防ぎ、より健やかな生活へとつながっていきます。

 もし、亜急性甲状腺炎が治らない、どうしたらいいかわからない場合は、お気軽に当院までご相談ください。

世田谷内科・糖尿病総合クリニックの亜急性甲状腺炎治療について

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