1型糖尿病

1型糖尿病とは?
1型糖尿病は、体内でインスリン(血糖値を下げるホルモン)を分泌する膵臓の細胞(β細胞)が何らかの理由により破壊され、インスリン分泌が枯渇(ほとんどない)して発症する糖尿病のことです。
β細胞からインスリンがほとんど出なくなるため、血糖値を下げるために、インスリン治療をするのが主な治療法になります。
全世界の糖尿病患者の約5%ほどが1型糖尿病といわれています。お子様から大人の方まで幅広い年齢で発症し、生活習慣病といわれる2型糖尿病とは、原因も治療法も違います。
1型糖尿病の原因
大きく2つに分けられます。自己免疫性(IA型)と特発性(IB型)です。
- 自己免疫性(IA型)1型糖尿病の原因
自己免疫性(IA型)1型糖尿病は、遺伝的素因を背景として、自己免疫異常によって発症する疾患です。本来は外来抗原から体を守る役割を担う免疫系が破綻し、自身の膵臓に存在するβ細胞を異物と誤認して攻撃することで病態が進行します。
この自己免疫反応が持続することで、膵島β細胞は慢性的かつ進行性に破壊され、インスリン分泌能が徐々に低下していきます。その結果、体内での血糖調節が困難となり、最終的には内因性インスリン分泌が著しく低下、あるいは枯渇した状態に至ります。
自己免疫異常が生じていることは、血液検査によって膵島関連自己抗体が検出されることで確認されます。代表的な自己抗体には、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体、IA-2抗体、インスリン自己抗体(IAA)、ZnT8抗体(ZnI8抗体)などがあります。これらは膵臓β細胞成分に対する免疫応答を反映する指標とされています。
日本人の1型糖尿病患者においては、これらの自己抗体の中でもGAD抗体の出現頻度が最も高く、約71%に認められると報告されています。続いてIA-2抗体が約62%、IAA抗体が約48%の頻度で検出されます。このため、実際の医療現場ではGAD抗体の測定が診断や病型の判断に広く用いられています。
このように、自己免疫性1型糖尿病は生活習慣が直接の原因となる病気ではなく、免疫の異常によって膵臓のインスリン分泌機能が低下することで発症します。早期に正確な診断を受け、適切な治療を行うことが、血糖コントロールと合併症予防のために重要です。
- 特発性(IB型)1型糖尿病の原因
特発性1型糖尿病では、明確な自己抗体が検出されないことが特徴です。
遺伝的な体質を背景に、ウイルス感染などの環境因子が加わることで、免疫とウイルスの反応が引き金となり、β細胞が破壊されると考えられています。
この過程では、自己免疫性と似た経過をたどることもありますが、血液検査で自己抗体が確認されない点が異なります。
そのため、検査結果や発症の経過を総合的に判断し、慎重に診断を行うことが重要です。
1型糖尿病と遺伝との関係
1型糖尿病は生活習慣が原因ではありませんが、家族や遺伝との関係が指摘されています。
家族が1型糖尿病の場合の発症リスク
1型糖尿病の親を持つ子どもは、そうでない場合と比べて発症する可能性がやや高くなります。
ただし、その確率は数%程度とされており、「必ず遺伝する病気」ではありません。
2型糖尿病との遺伝的影響の違い
2型糖尿病は、遺伝の影響が比較的強いことが知られています。家族に2型糖尿病の方がいる場合、発症リスクは大きく高まります。
一方で1型糖尿病は、遺伝だけで発症が決まる病気ではなく、免疫の異常やウイルス感染など、複数の要因が重なって発症すると考えられています。
そのため、家族に1型糖尿病の方がいても、過度に心配する必要はありません。
現在、日本では上記の原因をもとに発症や進行の様式によって、3つのタイプに分けることができます。
- 劇症1型糖尿病(特発性)
- 急性発症1型糖尿病(自己免疫性)
- 緩徐進行1型糖尿病(自己免疫性)
1. 劇症1型糖尿病(特発性)
劇症1型糖尿病は、1型糖尿病の中でも最も急激に発症するタイプです。多くの場合、ウイルス感染などをきっかけとして発症し、わずか数日という非常に短い期間で膵臓のインスリン分泌細胞であるβ細胞の大部分が一気に破壊されます。
その結果、体内でインスリンがほとんど分泌されなくなり、血糖値が急激に上昇します。発症の前後には、約70%の症例で、発熱や喉の痛み、腹痛、吐き気など、風邪や胃腸炎に似た症状が前駆症状が発症することが多いです。そのため、当初は糖尿病とは気づかれにくい場合もあります。
劇症1型糖尿病では、診断された時点ですでにインスリン分泌がほぼ枯渇していることが特徴です。そのため、診断後は速やかにインスリン治療を開始することが不可欠となります。治療が遅れると、重篤な高血糖状態や糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす危険性があります。
また、このタイプの1型糖尿病は、妊娠を契機として発症することがある点も特徴の一つです。妊娠中や産後に急激な体調変化とともに発症するケースも報告されており、注意が必要とされています。
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見または発症する糖代謝異常のことを指します。
主な原因は、妊娠に伴って分泌される胎盤ホルモンの影響により、インスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性が高まる)ことです。
膵臓のβ細胞が破壊される病気ではなく、多くの場合、出産後には血糖値が正常化します。
一方、劇症1型糖尿病は、ウイルス感染などを契機として、数日という極めて短期間で膵臓のβ細胞がほぼ完全に破壊される疾患です。
自己免疫が明確に確認されないことも多く、「特発性1型糖尿病」に分類されます。診断時にはすでにインスリン分泌がほとんど残っておらず、直ちにインスリン治療が必要になります。
2. 急性発症1型糖尿病(自己免疫性)
急性発症1型糖尿病は、1型糖尿病の中で最も一般的なタイプです。主な原因は自己免疫の異常であり、本来は体を守るはずの免疫が誤って膵臓のインスリン分泌細胞であるβ細胞を攻撃してしまうことで発症します。
この自己免疫反応により、β細胞は数か月から数年という時間をかけて徐々に破壊されていきます。発症の初期には、β細胞の機能がある程度保たれているため、自覚症状がほとんどない場合もあります。
β細胞の量が進行性に減少し、全体の約20%以下になると、体内で十分なインスリンを分泌できなくなります。その結果、口渇、多尿、体重減少など、高血糖に伴う典型的な症状が現れるようになります。
血液検査では、GAD抗体をはじめとする膵島関連自己抗体が陽性となることが多く、診断や病型分類の重要な手がかりとなります。これらの自己抗体は、自己免疫機序が関与していることを示す指標です。
また、発症初期には一時的にインスリン分泌が残存し、血糖値が比較的安定する時期がみられることがあります。しかし、この状態は永続的なものではなく、β細胞破壊の進行に伴い、最終的にはインスリン治療が再び必要となります。
3. 緩徐進行1型糖尿病(自己免疫性)
緩徐進行1型糖尿病は、半年から数年、場合によっては10年以上という長い時間をかけて進行するタイプの1型糖尿病です。自己免疫の異常によって膵臓のインスリン分泌細胞であるβ細胞が徐々に障害されますが、その進行は比較的ゆるやかです。
発症初期には、体内にまだ一定量のインスリン分泌が保たれているため、インスリン注射を使用しなくても血糖値をコントロールできる場合があります。そのため、見た目の経過や治療反応が2型糖尿病と似ています。
このタイプでは、検査により膵島関連自己抗体が現在または過去において単独、あるいは複数陽性となることが特徴です。経過とともにインスリン分泌能は年単位で徐々に低下し、数年後にインスリン分泌が枯渇する例もみられます。一方で、発症から10年以上経過してもインスリン分泌が完全には枯渇しないケースもあります。
自己抗体が確認された場合には、将来的なインスリン分泌低下を見越して、早期からインスリン治療を検討することがあります。これは、膵臓に過度な負担をかけないようにし、β細胞の消耗を抑えることで、病気の進行をできるだけ緩やかにすることを目的としています。
このように、緩徐進行1型糖尿病は一見すると2型糖尿病に似ていますが、自己免疫機序により将来的にインスリン分泌が低下・枯渇する可能性がある点が大きな特徴です。そのため、早期診断と長期的な治療方針の検討が重要となります。
1型糖尿病の主な症状は?
血糖サインを見逃さないために

1型糖尿病では、インスリン分泌が不足することで血糖値が大きく変動し、高血糖と低血糖の両方に注意が必要です。
症状は日常生活の中で現れることが多く、見逃してしまうと重症化する可能性もあります。それぞれの特徴を知り、早めに対応することが大切です。
1型糖尿病に該当するチェックリスト
- 家族に糖尿病の人がいる
- 最近寝ている時によく足がつる
- 最近やたら喉が渇く(口渇)
- 最近目がかすむ
- 視力が最近低下してきたような気がする
- 最近何をやってもだるい
- やたら喉が渇く(多飲)
といったように、2型糖尿病と症状は似ています。
1型糖尿病に起こりやすい高血糖の症状
血糖値が200mg/dL以上になると、
- ・のどが渇く
- ・尿の量が増える
- ・体重が減る
- ・全身のだるさ
これらは体が余分な糖を排出しようとする反応です。
高血糖が続くと、急性合併症や慢性的な合併症のリスクが高まるため、血糖値の数値を把握し、適切に管理することが重要です。
1型糖尿病に起こりやすい低血糖の症状
低血糖は、インスリン治療中に起こりやすい点が特徴です。
血糖値が70mg/dL以下になると、
- ・冷や汗
- ・動悸
- ・手の震え
- ・強い空腹感 などの症状が現れます。
- ブドウ糖
- 飴
- 糖分を含む飲み物
さらに低下すると、意識障害やけいれんを起こすリスクもあります。
低血糖は突然起こることがあるため、早めに気づき、適切に対処できるよう備えておくことが大切です。
低血糖に対処するための日ごろからの備え
低血糖に備えるためには、日常生活の中での準備が欠かせません。
外出時には、以下のような糖分を含む食品を携帯しておくと安心です。
また、家族や職場の方に、低血糖の症状や対処法を伝えておくことも大切です。
万が一のときに、周囲のサポートが受けやすくなります。
1型糖尿病と食事・運動による健康維持のポイント
新型コロナウイルス感染症では、発症から4週間以上経過しても下記のような後遺症が現れることが分かっています。
呼吸器障害として
1型糖尿病では、血糖値を安定させるに、日常生活の工夫が欠かせません。
中でも、食事と運動は血糖管理の基本となる要素です。インスリン治療を行っていても、食事内容や運動量によって血糖値は大きく変動します。
そのため、薬だけに頼るのではなく、生活全体を意識した管理が健康維持につながります。
1型糖尿病の血糖管理に食事療法が大切な理由
1型糖尿病では、食事によって摂取した糖質が血糖値に直接影響します。インスリン分泌が不足しているため、食事内容とインスリン量のバランスが特に重要です。
食事療法の目的は、
― 血糖値を急激に上げないこと
– 安定した血糖コントロールを保つこと
です。
炭水化物の量や食事のタイミングを把握することで、インスリン調整がしやすくなります。
無理な食事制限ではなく、継続しやすい食事習慣を身につけることが、長期的な健康管理につながります。
1型糖尿病の方が運動を安全に続けるための注意点
1型糖尿病の方にとって、適度な運動は、インスリンの働きを高め、血糖コントロールを安定させる効果が期待できます。
一方で、運動によって血糖値が下がりやすくなるため、低血糖には特に注意が必要です。運動前後には血糖値を確認し、必要に応じて補食をとることが重要です。
また、
– 体調がすぐれない日
– 血糖値が高すぎる
– 血糖値が低すぎる
といった場合には、無理に運動を行わない判断も大切です。
医師と相談しながら、安全に続けられる運動習慣を身につけましょう。
1型糖尿病の治療方法(当クリニックでの取り組み)

当クリニックでは、血液検査の結果からインスリンの量に応じて、また膵島抗体によって、インスリン治療を開始していきます。場合によっては1型糖尿病の方でも服薬可能な内服薬を併用する場合もあります。
また、1型糖尿病の患者様もインスリン注射の方には、自己血糖測定器をお貸出しさせていただき、血糖値を測定していただきます。しかし、自己血糖測定が苦手な方には、 フリースタイルリブレやカーディアンコネクトといった持続血糖測定器を使用しながら血糖測定をしていただくことも可能です。
当クリニックでは、炭水化物量に応じてインスリン自己注射単位調節をお願いさせていただくこともあります。
FreeStyle リブレ(持続血糖測定器)取り扱い


当クリニックでは、1型糖尿病の方の血糖管理をサポートするため、FreeStyle リブレなどの持続血糖測定器を取り扱っています。
FreeStyle リブレは、腕に貼り付けたパッチに機械をかざすだけで、血糖値をリアルタイムで測定することができる装置です。
指に針を刺す必要がなく、痛みがないため、
- 自己血糖測定が苦手な方
- 血糖値の状態を詳しく知りたい方
- 食事を摂るべきか否かなどを判断したい方
インスリン注射を1日1回以上されている方であれば、保険適応が可能です。
低血糖・高血糖の予防にも役立つため、ご希望の方はお気軽にご相談ください。
糖尿病専門医を中心としたチーム医療
当院では、豊富な臨床経験がある糖尿病専門医が在籍し、管理栄養士、看護師がタッグを組んで、患者様の治療をサポートしていきます。
日本糖尿病学会が行う専門医試験を合格した医師に与えられる資格です。
専門医試験には以下のような条件があります。
十分な臨床経験がある医師を対象に、日本糖尿病学会が認定する教育病院において、3年以上の臨床研修を終え糖尿病臨床に関する学会発表または論文発表などの条件をクリアし、日本糖尿病学会が行う糖尿病専門医試験に合格した医師に対して日本糖尿病学会から与えられる資格です。
また、糖尿病専門医は5年に1度の更新制度により一定のレベルが保てれています。
当クリニックでは、医師による診療に加え、管理栄養士が常駐し、栄養指導をご希望の方に対して具体的で実践しやすい食事のアドバイスを行っています。

日本初のアイランドキッチンを完備。生活習慣病に限らず、患者様ご本人はもちろん、ご家族が抱えるさまざまなお悩みや疾患の状況に応じて、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの栄養指導を受けていただくことが可能です。
地域病院との連携
血糖コントロールが不安定な患者様に関しましては、インスリンシリンジポンプのご使用をおすすめいたします。
その際は、当クリニックから大学病院をご紹介させていただくことも可能でございます。まずは、ご相談ください。
また、かかりつけの大学病院にてインスリンシリンジポンプの針が1日以上抜けてしまっていることに気がつかず高血糖になってしまい、持続型のインスリン注射を持参されていない方に関しましては、代替インスリンを処方することも可能です。
病態的にアシドーシスが著明である状況であれば、入院を要することもありますので、地域連携病院と連携をはかり、ご紹介させていただきます。
もしかしたら?・・
糖尿病予備群かもしれない・
血糖値が高めだと思う方はこちらを
電話予約: 03-6421-3803
地域医療連携病院一覧
世田谷内科・糖尿病総合クリニックでは、他医療機関と協力しながら、
地域から求められる医療を提供していきます。
世田谷区
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